ゆがんだ溺愛は、芳醇で危険


「でも香月くん、タイミング良かったよね」
「思った―。鈴木くんと小里さんが険悪になってた時だったからさ」

(そう言えば……)


さっきまで穴があったら入りたいと思っていたけど。

……いや、わりと今もそうなんだけど。

でも、さっきまで感じていた虚しさや恥ずかしさは、スッカリ忘れていた。悲しいっていうより、なに公の前で言ってくれてんの香月雅‼って怒りの方が勝ってるし。


「少しありがたかった……のかも?」


腑に落ちない事もあるけど。それでも、鈴木くんの棘のある言葉は、私に刺さらず抜けていった。それだけでも、良かった。


(終わった恋にまで、傷つきたくないもん)


だけど安心できたのも、放課後まで。

なぜなら――香月雅の公開告白を、既に教室に向かったはずの鈴木くんがバッチリ見ていたからだ。

更に、鈴木くんの周りで「香月雅に彼女を取られた可哀想な男」というレッテルが貼られ始めたからだ。

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