ゆがんだ溺愛は、芳醇で危険


バンッ


「むかつく……」

「え」


放課後。
誰もいなくなった教室で、鈴木くんと二人きりになった。

その瞬間――鈴木くんは私を見て、顔を歪める。


「なんで俺がフラれたみたいになってんだよ」

「え……フラれたのは、私……だよ?」

「知ってるっての!」


びくっ

付き合ってる時ですら、昨日の別れ話の時ですら。鈴木くんは大きな声を出さなかったのに。

今は、すぐにでも暴れ出しそうな獰猛さを感じる。


「香月のこと、本当かよ」

「え、香月雅?」

「告白されたのかよ」

「あ~……」


今日は、一日その質問をされた。香月雅に告白された?付き合ってる?彼女なの?って。

でも、どれも「違う」と答えた。香月雅が私で遊んでいるだけだって。

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