ゆがんだ溺愛は、芳醇で危険


「あの香月雅が、私に本気なわけないよ。ただの暇つぶしだって」


ズキン

自分で言っておきながら、ちゃっかり傷ついている自分がいる。

自分のことを自分で「暇つぶし」と言っちゃうあたり、私は自分を大切に出来ていない。元カレからも大切にされない私は、自分からも大切にされないらしい。

しょぼん、と落ち込んでいると。そんな私も気にもとめない鈴木くんは「だよな」と、高らかに笑った。


「あの香月が、小里となんて。そうだよな」

(〝なんて〟って、言っちゃうんだ……)


恋は盲目、とはその通りなもので。

鈴木くんはひどい人だと、別れてから気づいた。付き合っている時は、微塵も思わなかったのに。


「にしても小里も不運だよな。あの香月に目をつけられるなんてさ。軽い男とは聞いてたけど、本当に見境ねぇのな」
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