ゆがんだ溺愛は、芳醇で危険
「……うん、本当。そうだよね」


ハハハと、乾いた笑いが出る。

なんだろう。鈴木くんと話していると、どんどん自分が崩れてく感覚になる。いや、崩されてるというのか。自信をそがれる。

これ以上、一緒にいたくない。
もう帰りたいな、って。

カバンの取っ手を、力強く握った時だった。


「分かってないなぁ。軽い男が本気で〝好き〟っていう破壊力が、どれだけ凄まじいものか。鈴木、知らないの?」

「な、香月!?いつの間に……!」

「俺の可愛い人が、なかなか来ないから。迎えに来たんだよ」


香月雅は私の机まで来て、私の手ごとカバンを握る。「忘れ物ない?」と確認され、思わず頷いた。


「ちゃんと荷物をまとめてるあたり、かわいいね。一緒に帰ろうって約束、今度は覚えてたんだ」

(いや、すっかり忘れてました……)



そう言えば、朝の下駄箱で、そんな話を聞いていたような。
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