ゆがんだ溺愛は、芳醇で危険

でもココは既に香月雅の独壇場。自分の都合の悪いことは、全てシャットアウトするかのごとく。

私に喋らせないまま、さらりと教室のドアまで移動した。そのまま帰るのかと思いきや。

光の速さで私をさらう自分を、呆然と立ち尽くして見る鈴木くんを一瞥する。


「俺ってわりと平和主義なんだけどさ。それでもお前の口ぶりには嫌気がさすよ」

「は?」

「仁奈は、かわいいから。彼女の魅力に気づかなかった時点で、お前の負けだよ」

「!」

「じゃあ行こうか、仁奈」


開いた口が塞がらないのか、言葉を失った鈴木くんは、最後まで何も言わなかった。あんなに驚いた顔、初めて見た。
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