ゆがんだ溺愛は、芳醇で危険


そう、かも……。

相手に気に入られたい一心で、選択権を全て相手に委ねていた。デート先も、お昼ご飯も、何もかも。

そっか私……。


「こういう所が、ダメだったんだ……」


香月雅に指摘されたというのが気に入らないけど。でも指摘されないと、気づかなかった。


なんでも「彼氏に合わせる」じゃ、ダメなんだ。


私の思ってる事が分からないんじゃ、彼氏としては面白くないよね。子供のお守りしてる気分になるのも、頷ける。


「でもまぁ、それ以前に。鈴木がいつまで経っても、仁奈を所有物みたいに思ってる態度も気に入らなかったし。俺としては釘をさせて良かったな」

「釘?」


最初の方が聞き取れなかった。なんて言ったの?それに釘って、何の話?

だけど香月雅は、話を蒸し返す気はないらしい。

スッと目を細め、私の頬に手を添えた。かと思えば流れる仕草で、キスする一歩手前まで顔を近づける。
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