ゆがんだ溺愛は、芳醇で危険
意味がわからなくて小首を傾げる私、とは反対に。香月雅の眉間に、さっきのシワは、もうなかった。
……いいなぁ。
香月雅は自分の中に生まれた感情を、こうも早く処理できるんだ。私なんて、元カレからの振られセリフを、全部覚えて今も苦しんでるって言うのに。
もしかして〝何事も気にしない楽観主義〟が、モテる秘訣だったりするのかな。
でもね。私は……別にモテなくてもいい。
でも、たった一人の男の人には好かれたい。
そのためには――
「あなたの事はハッキリ言って嫌いだけど、正しい恋は知りたいから……教えてほしい。よろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げる。すると「こういう時は素直だよね」と、呆れ声で笑われた。
「いいよ、教えてあげる。ただし俺が教えるのは〝正しい恋〟じゃなくて、
〝楽しい恋〟だからね」
「!」
楽しい恋、と聞いた瞬間。
胸のトキメキが弾けてしまって。
思わず「うん!」と、元気な声が出てしまう。この時、今日初めて素で笑うことができたと、後で気づいた。
「……仁奈に落ちた元彼たちの気持ちがわかった気がするな」
「何か言った?」
「んーん、ひとりごと」
こうして一緒に帰ることになった、私と香月雅。
帰り道に一緒にジュースを買って飲んでいると、「放課後デートだね」と言われ。
遅れて事の重大さに気づいた私は、また絆されかけていると気づいて。香月雅から、素早く距離を置いた。