ゆがんだ溺愛は、芳醇で危険

小夜ちゃんは、ランチ後のデザートに入ったらしい。一口チョコをパクッと口に入れた。瞬間――甘い匂いが辺りを漂い、鼻腔をくすぐる。

あぁ、やっぱり甘い物っていいなぁ。体の力が抜けていくよ。


……そういえば。


「香月雅って、いつも危険な香りがしてるんだよね」


初めて会った時だって。匂いが一段と濃くなった時、香月雅は私の隣にいた。

あの人こそ「危険な匂いの権化」と言ってもいい。


「危険な香りってもねぇ。何かの香水なんじゃないの?それか、自分との相性がいいのか」

「相性がいい?」

「男女の相性がいいと、相手の匂いも良い香りに思うって聞いたことあるよ。あと、肌が触れただけで気持ちいい、とか。キスするだけで幸せ〜って思ったりとか」

「幸せ〜……?」


外れた音階を奏でるように。私の口から出た不協和音は、小夜ちゃんが思ってる場所とは違うところに着地した。
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