ゆがんだ溺愛は、芳醇で危険

「って――いやいや、騙されないぞ。だって私と話してるんだから、私しか見てないの当たり前じゃん」

「でも、それが本当なんだって。仁奈しか視界に入れてなかったよ。他の人には目もくれない感じでさ」

「……そんなこと言われてもさ」


昼休み。ネクタイが歪むようなコトをしながら、片手間に打ったメールを「読んだ?」って聞く香月雅のことなんか……どうでもいい。

むしろ、やっぱりクズの遊び人だなって再確認したところ。


「昨日は放課後、今日は昼休み……隙間をぬってはいかがわしい事をして、香月雅はケモノだよ。恋を教えてもらう接点さえなければ、近づきたくもないな」

「トゲがある言い方だね。まさか怒って
「怒ってない」

……いや、怒ってるじゃん」


苦笑を浮かべた小夜ちゃんは、「なんで怒ってるの?」って追求しなかった。

小夜ちゃんのことだから〝私〟を分かっていたのかもしれない。私が怒っている理由を、私自身がわかってないって。

だから「なんで怒ってる?」って聞いても、答えは返ってこないって。分かっていたのかも。
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