ゆがんだ溺愛は、芳醇で危険
私のハテナを察したのか、香月雅が説明を始める。
「さっき仁奈の友達に会ったよ」
「小夜ちゃん?ボブの子?」
「うん。仁奈がココにいるって教えてもらった」
切れ長の瞳を、優しく細める香月雅。……ほら、小夜ちゃん。
この遊び人は、いついかなる時でも、女子を食わんとチャンスを伺っているんだよ。可愛い小夜ちゃんなんて、かっこうのターゲットなんだよ。
だから香月雅が私と話してる時「私しか見てなかった」なんて。絶対にありえない。私の隣にいる小夜ちゃんを、なめるように見ていたに違いない。香月雅なら、きっとそうする。
「小夜ちゃんって言うんだけどね、かわいくて優しい子なんだよ。……って、あなたなら、それくらいの情報とっくに知ってるか」
ハハハ…と乾いた笑いをこぼす。
だけど香月雅は漆黒の瞳をパチクリさせながら、「へぇ」と意外そうに相槌を打った。