ゆがんだ溺愛は、芳醇で危険
「君のさっきの言葉って〝愛されたい〟って言ってるように聞こえるけど、合ってる?」
「愛、されたい……?」
「俺はね、愛せるよ」
黒色の猫毛。前髪はセンターより右側で、なんとなく二つに分かれている。高い鼻に、薄い唇。右耳には黒いピアスがキラリと光る。
いつの間に私の横に座ったか分からない、その人は。
同じ学校に通う、香月(こうづき)雅(みやび)。
「学校一のイケメン」と同時に「学校一の遊び人」と女子から呼ばれる、堂々としたクズっぷりで有名な男だ。
そんなクズ男・香月は、整った顔を武器にして。まぶしい笑顔をふりかざした。
「君、愛されたいんでしょ?なら無茶苦茶に愛してあげるよ。……偽りで良ければね」
この人物を視界に入れた瞬間。独特な匂いは強くなり、頭の中で警鐘が鳴り響く。
この匂いは、この人物は、
どうしようもなく危険なのだと――