ゆがんだ溺愛は、芳醇で危険
「い……!?あのさ仁奈ちゃん。さすがに俺の背中が痣だらけになるから、力加減を考えよう?」
「なら痣がつく前に、さっさと離れて……!」
はぁ、はぁと。肩で息をする私を見て、なぜか香月雅は満足気に頷いた。 眉尻の上がった強気な表情に、私の心臓が少しだけはねる。
「手を繋ぐのも久しぶり、更にはこっちも未開発か」
(……あぁ、少し前の私よ)
この男に流されてしまう自分を、どうぞお許しください……っていうか。香月雅を前にすると、一気に非力になる私を、どうにかしてください。
「ほら仁奈。口を開けて。今度は大きくね。これから二人で色々知っていこうね。大丈夫、開発ってね楽しいんだ」
(……はぁ、なんてこった)
香月雅の危険な匂いに包まれながら。
彼の歪んだ溺愛に、のまれながら。
今日も私は、勝手に翻弄されている。