ゆがんだ溺愛は、芳醇で危険
「オハヨ〜、仁奈」
「私に正式な挨拶をしてくれるのは、小夜ちゃんだけだよ……」
小首を傾げる小夜ちゃん、かわいい。
「何言ってんの」と笑う小夜ちゃん、かわいい。
今日は体育があるからか、ポニテにしてる小夜ちゃん、かわいい。
そう。「可愛い」とは、本来こういう使い方をするのだ。何をどう間違えても、その辺にいる雑草に「かわいいね」とは言わない。誰しもが、綺麗に咲く花を見て「かわいい」と言うのだ。
それは例外なく。
誰しも、みんな同じなはずだった。
この男を除いては。
「仁奈〜、今日もかわいいね」
「……」
香月雅。いつも危険な香りをプンプンさせて、両手に女子を侍らせているこの男が、なぜか、私に「かわいい」と言うのだ。それこそ、毎朝の挨拶のごとく。