ゆがんだ溺愛は、芳醇で危険
気にならないと言えば、嘘になる。小夜ちゃんの言う通り、香月雅が本気になった恋を聞いてみたいし。
だけど、こう……聞きたいけど、聞きたくないような。聞く前から、なぜか気持ちが下がっている。
(……あ、そうか。私の嫌いな数学の授業中だから、テンションが落ちてるだけなんだ)
そういう事にして、再び黒板を見る。だけど不思議なことに……。
嫌いな授業だというのに、あっという間に終了のチャイムが鳴る。ばかりか、その日の授業は「え、もう終わったの?」の連続だった。
それにより私は、心の準備が出来ないまま。香月雅と一緒に帰る放課後を、迎えてしまう。
「そ、そ、それってさー、すっごくオシャレだよねー」
「……どうしたの、仁奈」
恒例になりつつある、一緒の下校時間。小夜ちゃんからの任務を好こうせむ!と、香月雅のピアスを褒めてみた。いわゆる「きっかけ作り」というやつだ。