青春は、数学に染まる。 - Second -
第一話 数学補習同好会の変革

新学期


「真帆、2組だ! また同じクラスだよ!」
「本当! 良かったぁ!!」

4月になり、新学期が始まった。
私、藤原(ふじわら)真帆(まほ)と親友の的場有紗(まとばありさ)はここ『県立桜川高等学校』の2年生になった。

「俺も2組か。同じだな」
「……げ!! 神崎!! 最悪! 真帆、逃げるよ」
「的場さん! 何だよ、その反応! 藤原さん、逃げないで!!」

同級生の神崎大輔(かんざきだいすけ)くん。
1年生の時に数学の補習で一緒になってから付きまとわれている。好きだと何度か告白されたが断り続けており、今に至る。


私は有紗に手を引かれて昇降口まで走った。
桜の花びらが空に舞っていて綺麗。春って感じ。

新鮮な気持ちを胸に、新しい2年生の教室へと向かった。





朝のホームルームの後、体育館へ移動する。


始業式。
担任の発表が一番の楽しみだ。


「担任誰だろうね。ちょっとワクワクする!」
「分かんないけど、また飛谷先生じゃない?」
「大抵持ち上がりなのかなー? それだと面白く無いよね」

1年の時担任だった飛谷先生。
可もなく不可も無いが、また同じだと新鮮味が無い。

「ねぇねぇ、真帆! …早川先生だったらどうする…?!」

耳元でそう囁く有紗。

「…そうねぇ。どうしようか」

早川裕哉(はやかわゆうや)先生。数学教師で私が所属する数学補習同好会の正顧問。
そして…秘密のお付き合いをしている、私の彼氏。



体育館に入ると、左側の壁のところに立っていた。
七三分けに銀縁眼鏡。いつもは白衣を着ているのだが、今日は黒色の背広を着ている。


春休みの間、たまにメッセージでやり取りをしていたが、こうやって姿を見るのは久しぶり。
新学期の準備等で先生も忙しそうで、プライベートで会うことが全くなかった。

「真帆ちゃん? 見すぎだよ!」
「え、そう?」

有紗に頭を掴まれ、正面に戻される。




「それでは、まずは着任式を行います」


着任式。忘れていた…。
新しい数学教師が来るのだった。



1年生の時、早川先生の他に伊東という先生がいた。
この人も数学教師。数学補習同好会の副顧問だったのだが、不祥事を起こし新学期から転任させられた。

その代わりが、今日着任する。

今年度着任する先生は5名。
そのうち1名が、数学教師だった。



「初めまして! 桜川商業高校から転任してきました、浅野遥希(あさのはるき)と言います! 担当科目は数学、年齢は26歳です! どうぞ皆さん、宜しくお願いします!」


浅野先生。小柄な感じの男性。濃い茶髪で、天然なのか髪の毛がウェーブしている。
日頃ネクタイを結ばないのか少し捻じれている上に、スーツに着られている感が強い。

「若い…男」


早川先生は『ご年配の女性数学教師』が来ることを祈っていた。
その願いとは真逆の人物…。


私は横目でチラッと早川先生を見た。
いや……目!! 目が怖い!!!


早川先生は腕を組んで、睨むような目付きでステージ上の浅野先生の方を見ていた。






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