青春は、数学に染まる。 - Second -
「本当に有り得ない!! 何なのさアイツ!!!」
昼休みの中庭。
相変わらず誰もいなくて貸し切り状態だ。
「真帆ももう少し強く言ったら!? 神崎も調子に乗る一方だよ!!!」
「うーん…というかあれよね。先生と付き合っているって言っちゃえば楽になるよね」
…頭ではそう思うけれど。
本当は言えない。
万が一神崎くんが他の人にバラしたら…考えるだけで怖すぎる。
裕哉さんの“教師”という仕事。
それは絶対に守り抜かないといけない。ご両親の話を聞いた時、強くそう思った。
「というか、浅野先生が軽音部で数学補習同好会の話をしたってことよね? 何で話したのかな」
「そりゃ…軽音部に最初1時間くらい行けない理由を話さないといけないからじゃない?」
「あぁそうか…」
手に持ったサンドイッチにかぶりつく。
神崎くん…本当に厄介だ…。
「どうしよう。神崎くんに対して何をすればいいんだろ?」
「きちんと振る。これに尽きるんじゃない?」
「何度も断っているけど…」
「彼氏がいるって言えば、諦めると思う」
「それが言えないから…」
「まぁ…そうよねぇ~」
ベンチの背もたれにもたれ掛かって真上を向いた。
雲一つない青空。心地良すぎる…。
「…ん?」
「どうしたの?」
「あ、いや…」
真上を向くと、背面にある校舎の4階までが良く見える。
そのうち1つの窓からこちらを見ている人がいた。
「……誰だろう」
頭を戻し、ベンチから立ち上がってその窓を見る。
しかし、そこにはもう人の姿は無かった。
「どうしたの、真帆」
「いや、人が覗いていたんだけど。いなくなっちゃった」
「神崎じゃない?」
「えー! そうだとしたらドン引き」
この背面の校舎は特別教室棟。生徒では無いと思うけど…。
何だかモヤモヤした気持ちのまま、昼休みが終わった。