青春は、数学に染まる。 - Second -
誕生日
やって来る。
1年で1番のビッグイベント。
誕生日。
この前のデートの時に、早川先生の誕生日が私の翌日だと知った。
去年は出会って間も無かったから、当然何もしていない。
今年は…絶対に祝う!!
「真帆~!! ハッピーバースデー!!!!」
「ありがとう有紗!」
朝、私を迎えに来てくれた有紗は、開口一番にその言葉を発した。
5月21日。私の誕生日だ。
「真帆のママもおめでとうね~!!1」
「有紗ちゃん、ありがとう!」
玄関の扉から叫んで、お母さんにも伝えてくれる有紗。
本当、良い子だよ…。
「真帆は17歳になったのかぁ~」
「そうそう」
「早いよねぇ、つい最近まで小学生だった気がする!!」
「それは盛りすぎだよ~」
そう言いながら、頭では別のことを考える。
今日が私の誕生日ということは、明日は早川先生の誕生日だ。
…祝いたい。
そう思っているけれど。
実際、何をしたら良いか分からない。
「ねぇ、有紗。明日は早川先生の誕生日なんだ」
「えぇ!? 1日違い!?」
そんなの運命じゃん!!
そう言いながら有紗はジャンプし始めた。
「そう。でさ、何をしたら良いと思う?」
「うーん…そうねぇ…」
盛大に何かをしたいけれど。
所詮私は、親に生活させて貰っている高校生。
バイトをしているわけでも無いし、お金を掛けてどうこうというのは難しい。
「気持ちじゃない? おめでとうって一言言うだけでも伝わるよ」
「そうだけれど…」
折角の誕生日。
先生のことを祝ってくれる身内が近くにいない今、そのポジションに立つのは私だ。
因みに、先生のご両親のことは有紗に話していない。
有紗とは言え、先生も知られたくないだろうし。
そこはきちんとお口チャック。
「真帆、分かった! あれだ。真帆にリボンを巻いてからさ。プレゼントは? わ・た・し♡ とか!!」
「…ふざけないで。漫画の見過ぎだよ」
「えぇ~、絶対良いと思ったのに」
そんなことできないよ。
ドン引きされて終わるのが目に見える。
「まぁ、今日中は考えてみるよ」
「何か良い方法が思い浮かぶといいね」
「うん」
「そう言えばこれ、プレゼント!! 真帆この前、ボールペン壊していたでしょ? だからそれを選んだの~!」
「え、ありがとう!!!」
同好会の活動中、力が入りすぎてボールペンの先端が割れてしまった。
それを見ていた浅野先生が『馬鹿力』なんて言うから、一時的に私のあだ名になっていた。
「有紗、見ても良い?」
「もちろん!」
貰った袋を開けると、水色の水玉が描かれている4色ボールペンと、メモ帳が3冊出てきた。
「可愛い! さすがセンスある!」
「というか、真帆の好みを良く知っているからね! 真帆が好きそうな物は手に取るように分かるよ!」
「ふふ、付き合い長いもんね!」
「そうよ! 突然湧き出てきた早川先生には負けないんだから!」
え、何その早川先生を敵対視したようなセリフ。
今までそんなこと言ったことあったっけ?
唐突な言葉に目が点になった。
早川先生は有紗に嫉妬するし。
有紗は謎に敵対視しているし。
この2人は一体なんなの?
そう思うと同時に、面白すぎて思わず笑いが零れた。