青春は、数学に染まる。 - Second -

先生も交えた夕食。
4人で色々な話に花が咲き、とても楽しく心地良い時間を過ごした。





「ちょっと、2人とも飲み過ぎよ…!!!」
「大丈夫!! ほら、裕哉くんも大丈夫だろう?」
「…はい、問題ありません」




顔が赤らんでいる先生とお父さん。
先生はいつも通りを装っているようだが…どこか様子が違う。


「真帆ちゃん…」
「ちゃん!?」


ギュッと抱き締めてくる先生。
頬をくっつけて優しくスリスリしてくる。


「え、先生…恥ずかしいから止めて…」
「イヤだ。名前で呼んで」
「ゆ、裕哉さん…止めて下さい…」
「止めません」



こ……この酔っ払いがぁ!!!!!




お母さんに視線を送って救済を求める。
しかし、お母さんは首を振って親指を立てた。グッドじゃないのよ!!!

お父さんもお酒を飲みながら笑っている。



この2人…娘が彼氏とくっついている様子を見ても何も思わないの!?





「…ねぇ…真帆ちゃん。昨日、暴力を振るわれた姿を見て、本当に辛かった。痛かったよね。僕がその痛みを貰えたらどれだけ良かったか…今日はずっと、そんなことを考えていた…」


先生はスリスリするのを止めて、頬をくっつけたまま話し始めた。

敬語ではない先生があまりにも新鮮過ぎて、心拍数が上がる。




「そういえば、結局真帆は何で暴力を振るわれたんだ?」



両親には経緯を話していなかった。


いやぁ…しかし、神崎くんのこと言えなくない…?






そう思い口を閉ざしていると、私の感情をガン無視して先生が話し始めた。




「真帆ちゃんは同級生の神崎っていう人から好意を寄せられています。その神崎はクラスの中でも人気で、常に周りには女の子がいるような男です。…今回は、神崎が真帆ちゃんに好意を寄せていることを良く思わなかった、周りの女の子たちによる暴力です」


淡々とそう言う先生。
しかし口調には怒りが込められている。


「…真帆、モテモテか…」
「そうですね。真帆ちゃんは色んな人からモテます。ね、そうよね」
「………」


先生の言う”色んな人”に含まれているのは神崎くんだけではないことは容易に分かる。


「けど、真帆。母さんも昔はモテモテだったんだぞ? そんな母さんの子だから、父さんは全く不思議に思わん」
「そうなの?」
「右手に男、左手にも男。前後にも、男」


お父さんがそう言うと、お母さんは手に持っていたタオルでお父さんの頭を叩いた。


「言い方が悪いわ。違うの、あの男たちは私の親衛隊の人たちよ」
「親衛隊!?」
「要は学校のマドンナだったんだ」


初めて聞く親の昔話。
今の様子からは全く想像できなくて面白い。


「母さんが高校生の頃は、自分で鞄を持って登下校をしたことが無いんじゃないか? いつも誰かに持たせていたよね」
「だから、言い方が悪いの。親衛隊の人たちが気を利かせて持ってくれただけよ」


え、お母さん怖いな…。
何者なの。





「…何だか、その話を聞いたら安心しました。真帆ちゃんはマドンナには程遠いね」
「え、いや。事実だけれど失礼すぎる!!」



しかし…そんなマドンナを手に入れたお父さんも何者なの。

面白すぎるから、今度また詳しく聞いてみようかな。




「とにかく…真帆ちゃん。お願いだから、神崎とはもう関わらないでよ。僕の目の届かない場所で…もう二度と傷付いて欲しくないから」
「……はい、分かりました…」



悲しそうな先生の表情に、胸が苦しくなった。






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