青春は、数学に染まる。 - Second -


「……」




静寂が訪れた。



「…真帆さん」
「…はい」




早川先生は後ろから正面に回り、私と向き合う。
そして、勢いよく唇を重ねて来た。


何度も、何度もくっつけては離す。

何度も繰り返し、そのうち舌を絡める。



激しいキスに足の力が抜け、床に座り込んだ。
それでも先生は、優しく体を支えてくれながらキスを繰り返す。


「先生…激しい…」
「……」


それでも無言で繰り返した。



ふと唇に感じるしょっぱさに閉じていた目を開けてみる。


先生は…泣いていた。



「先生…」
「だから、だから…不安だと言ったでしょう」
「でも、私にはどうしようもできません。その感情に答えないことしか、できることはありません」
「………知っています。知っていますとも。…ごめんなさい。最初から分かっています。真帆さんを攻めて拗ねてもどうしようもないこと…」


大粒の涙が止まらない。
ハンカチを取り出し、先生の眼鏡をそっと取る。
そして、目からポロポロと零れる涙を優しく拭った。


本当に…どうしようもできない。


浅野先生と神崎くんから物理的に離れるしかない。
けれどそれは、この学校を去るしか…解決策は無い。


「本当僕は、最初から貴女を困らせてばかりです」
「…全くです」


自覚があるなら直してくれないかな。




私は先生の眼鏡を机に置いて、強く先生を抱き締める。
強く、強く…私が出せる力を振り絞って…。


「……痛いです」
「痛くしていますから」


今度は先生の首筋に唇を当てる。
痕が付かない程度に吸い、その首に歯を立て、軽く噛み付く。


「……真帆さん。どこで覚えたのですか」
「………」


無言を貫き、先生の首元に手を移す。
ビシッと締められているネクタイに手を掛け、そっと解いてみた。


こうやって結んでいるのか…。


仕組みが分かればこちらのもの。
スルッと解くことができた。


「何をしているのですか…」


眼鏡が無いと何も見えない先生。
そんな先生の唇を塞いだ。


何度も角度を変えながら唇を重ねてみる。
それと同時に、カッターシャツのボタンにも手を掛けた。


ボタンをゆっくりと外していく。


「真帆さん…何を考えているか分かりませんが、学校ですよ…」
「それ、いつもの私のセリフです」




………正直、ドキドキしていた。
手が大きく震えてどうしようもない。




有紗から借りた恋愛漫画で得た知識のみでの行動。

心臓が口から出てきそうなくらい、心拍数が上がっていた。



「真帆さん」
「……」
「真帆さん、眼鏡を返して下さい」
「……」
「真帆さん」
「…はい」


そっと眼鏡を掛けてあげる。


先生は少しズレていた眼鏡の位置を戻し、そのまま私を床に押し倒した。



「…先生、学校です」
「どの口が言っているのですか」

そう言って覆いかぶさってきて、深いキスをした。


「待って、私が裕哉さんを襲いたいの」
「意味が分かりません」
「私がどれだけ本気か、他の人に興味が無いかを分かってもらおうと思いまして」
「…そうですか」

それでも先生は覆いかぶさったまま降りる気配はない。

何度もキスを繰り返し、私の制服に手を掛ける。




そこから私たちの間に会話は無くなり、只々本能のまま激しくお互いを求めあった。






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