青春は、数学に染まる。 - Second -

不穏


「私、文化祭のメイン企画を考えてきたんだけど。先生たちによるコスプレショーみたいなの、どうかな? 盛り上がると思わない?」


放課後の文化祭実行委員会。
係ごとに分かれて打ち合わせの時間に、津田さんはそう言い出した。


「それ盛り上がるか? 普通に生徒から出場者を募集してファッションショーした方が良くね?」
「神崎くんには分からないかもしれないけど。普段とは違う先生の様子を見たら生徒は興奮するものよ」
「それは生徒同士でも同じだと思うけど」
「うちは神崎くんの意見に賛成」


3人による積極的な意見の言い合い。
私は黙って傍観をしていた。


「近藤さん。例えばだけど、担任の普段とは違う姿とか見られたらどう思う?」
「…どうって…早川先生の違う姿? ……いや、興味無いね」
「例えばだけど、いつもの七三分けをしていない姿とか…どう?」
「…興味無いけど。何なの、津田さんは早川先生のことが気になるわけ?」
「そ、そういうわけじゃないけど。面白そうじゃん…?」
「分からんわ」



……………。




これ、あれだ。
津田さんには下心がある。


イベントに乗じて、早川先生の違う姿を見ようとしているのだと思う。
何なら関われたらいいなくらいまで思っているのだと、思う。


「藤原さん、顔」
「……」


神崎くんが耳元で囁く。
いけない…感情が顔に出ちゃう。


「ねぇ、藤原さんはどう思う?」
「…私は、神崎くんの意見に賛成。生徒のファッションショーで良いんじゃない?」
「じゃあそうしようよ。多数決で、決定!」


神崎くんと近藤さんが大きく拍手をする。


「………」


津田さんは睨むように私を見ていた。
…私を睨んでも…どうしようもないのに。


「うちが企画書まとめて浅野先生に提出しておくよ!」
「うん、よろしく」




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