青春は、数学に染まる。 - Second -
交錯
修学旅行当日がやってきた。
学校に集合し、クラスごとにバスに乗り込んで出発する。
「真帆、楽しみだね!」
「……いや、全然」
「神崎のことは気にしちゃダメだよ。折角だから楽しまないと」
「うーん……」
3組のバス付近に立っている早川先生。
あちらも何やら表情が険しそう。
そして、その早川先生から数歩離れた所に立っている津田さん。
タイミングを図っているのが見え見えだよ…。
「ところで、真帆。首元どうしたの?」
「………え」
「絆創膏貼っているところ。怪我?」
「…う、うん。虫に刺されたところから血が出ちゃって」
「今の時期に虫いるっけ?」
「いるいる。蚊…とは違う何か」
「そうだっけ?」
ニヤニヤしている有紗。
この人は…本当に…。
虫じゃないこと、絶対に分かっているでしょ!!!!!
この前先生の家に行った時。
その行為の最中、先生は私の身体のあちこちに、何度も何度もキスマークを付けた。
「…裕哉さん、首元は駄目ですよ…。制服から見えます」
なんて言うと
「男避けですから」
と、大人げないことを言っていた。
仕返しに私も先生の首元にキスマークを付けてみた。
結構綺麗に付けることができたのだけど…。
しかし、今見た感じ。
丁度良くカッターシャツの襟に隠れているではありませんか!!
…失敗だ。
位置がもう少し上だったら良かった。
「ねぇ、真帆。やっぱり先生とそういうことをしてるんだね」
「……」
ニヤニヤしながら耳元で囁くようにそう言う有紗。
…ほら、良く分かっている。
「……………男避けだって」
「え、男避け?」
「修学旅行中の、男避け」
そう言うと有紗は吹き出して、その場にうずくまった。
大笑いしたい気持ちを抑えて控えめに笑っている。
「はぁ~…真帆、愛されているね」
「…うん、それは間違いない」
「でも、制服から見えるのは駄目だよ。独占欲が強過ぎる」
「うん。だけど私もその気持ちは分かるんだ。私も同じように付けたんだけど、襟の部分で隠れているのが残念でね。もう少し上にすれば良かったって思っている」
「は!?」
有紗はまた吹き出して、その場にうずくまった。
「真帆……無理、無理すぎ…!! 洗脳されているね…」
「いや、洗脳じゃないよ。津田さんの動きが怖いから。見える場所に印を付けておきたいと思っただけ」
…と言いながら思う。
私もかなりヤバい人だ。