青春は、数学に染まる。 - Second -
跡
3日間お世話になるホテル併設のスキー場に着いた。
辺りは一面真っ白で、雪がひらひらと舞い降りている。
「寒い…」
「身が縮こまるね」
有紗と2人、震えながら建物の中に入る。
そこにはスキーウェアや装備などが沢山置いてあり、スキーをやらざるを得ないこと実感する。
スキーはやったことが無い。
怖そうなイメージがあるから、できればやりたくないなぁなんて思う。
今日は着いた初日と言うことで、オリエンテーションや諸々の説明だけで終わった。
実際に滑るのは明日かららしい。
夜は大広間でクラスごとに食事を取り温泉で入浴。
点呼時間に部屋にいることさえ守れば、ホテル内は自由とのことだ。
「真帆、温泉いつ行く?」
「…うーん、そうね。有紗には悪いんだけど……」
ホテルの一室。
有紗と同室の私は、部屋で荷解きをしていた。
「あのね〜…。有紗…その……」
「なによー! 伝わらないよー!!」
無言で制服を捲り、有紗にお腹を見せる。
…そう。
ちょっと温泉は…と思う理由。
先生に付けられたキスマークの量が凄いから。
「…………わぁ……………」
有紗は一瞬で顔を赤くし、両手で頬を覆った。
お腹の他にも背中や足にも付いている。
「これだから、私は部屋で済まそうかなって思って…」
「いや…これは凄いわ。………しかし、あの眼鏡〜!!! 折角の修学旅行で温泉に入るってこと分かっているだろうに!! ここまでするかよ!?」
「しかも先生ね、これした後に、僕のことは忘れて高校生として楽しんで下さいって言ったからね」
「はーん!!! 頭おかしいかよ!!! 矛盾し過ぎだわ!!!」
早川先生の独占欲が凄いことには気付いていたけれど、その欲の大きさは私が思っていた以上なのかもしれない。
でもまぁ別に、お風呂にさえ入れれば良いから。
温泉に行かなくても良いんだけれどね。
「あの眼鏡…真面目そうな見た目して、やることはえげつないな」
「ヤバいよね〜私もびっくりしちゃって。ということで有紗。申し訳無いけれど、温泉には1人で行ってきてもらえるかな?」
「あ〜寂しいけど分かった!!! 途中で変態眼鏡を見つけたらボコボコにしとくね!!!!」
「それはやめて…」
有紗が部屋を出て行き、1人になった。
鏡の前に立ち、改めて自分の体を見る。
付けられたキスマークの殆どが青紫色になっていた。
「…………」
本当は、嬉しいんだ
先生と生徒の恋愛という、秘密の関係。
遠目に見えるあの先生が私の彼氏で。
その先生が私に付けた跡が身体中にあって。
実は私も、先生の首元以外の場所にも跡を付けていて。
優越感とはまた違う。
何とも言えない感情で胸がいっぱいなんだ。
だから別に、温泉に入れないことに関しては何も思わない。
ただ……そんなこと、有紗には口が裂けても言えないけどね。