青春は、数学に染まる。 - Second -
東京観光
地獄のスキー研修は無事に終了した。
最終的に私は、緩やかな傾斜の有る場所から自力で滑れるくらいにまで成長した。
私の中ではベストだ。
一方、有紗と神崎くんと浅野先生は、リフトに乗って高いところから軽快に滑っていた。
それを見学していたのだけど、3人が一緒に滑ってくる様子を見た時は物凄く鳥肌が立った。上手すぎて本当に驚いた。
そして、いよいよ修学旅行最終日。
私たちはバスに乗って移動し、東京駅に来ていた。
「今日は自由観光です。14時に東京駅に集合。それさえ守ればどこに行っても構いません。もし何かありましたら、各自携帯電話で私に電話をして下さい。番号登録していますよね? もしまだの人がいれば、早急にお願いします」
1組担任の飛谷先生が学年主任。
飛谷先生は全員の前でそう説明し、生徒たちは解散となった。
「真帆、どこ行く!?」
目をキラキラさせている有紗。
大まかなことは事前に決めていたが、ある程度は行き当たりばったりでも良いよねと話していた。
どこ行こう……というか、早川先生と浅野先生は本当にデートするのだろうか?
そう思いながら辺りを見回す。
「……あっ」
少し離れた場所に2人は立っていた。
しかも、浅野先生が早川先生の肩に腕を回している。
……何で?
呆然と2人を眺めていると、突然頭を掴まれて回された。
「こーら、真帆ちゃん? 見すぎだよ!!」
「……え?」
有紗だ。
私、そんなに見てた?
首を傾げると有紗は私の耳元で囁いた。
「早川先生が浅野先生とデートするって言ったでしょ? それなら気にせず、私たちは私たちで楽しもうよ!!」
……そうだね。折角の東京だし。
「…楽しもうか、有紗!」
「その意気だ!!」
取り敢えず適当にどこかへ向かおうと歩きだすと、津田さんとその友達が走って目の前を通り過ぎた。
「ん?」
2人が向かった先は、早川先生と浅野先生のところだった。
「…………」
一緒に行こうと誘っているのだろうか?
早川先生は顔を横に振り続け、浅野先生は早川先生を抱き寄せながら、津田さんに向かって手を振っていた。
「…何あれ。津田さん、まだ先生のこと諦めてないの? 本当に嫌な感じ」
「津田さん、思っていた以上に脅威だよ」
早川先生も浅野先生も、誘いを断っているみたい。
先生2人がくっついている意味は全く分からないけれど。
「…………」
モヤっとする。
浅野先生、くっつきすぎ。
津田さんに対してとはまた違う、モヤっとした気持ちが芽生えた。
「…………」
あれ、もしかして。
気付いてしまったけれど。
この気持ちって、早川先生が良く言う『僕は的場さんにも嫉妬してしまいます』というやつと同じなのでは!?
「うわー…………」
「…ん? 真帆、大丈夫?」
「…あ、うん」
思わず自分で自分に引いてしまった。