青春は、数学に染まる。 - Second -
私と有紗は東京駅を離れ、墨田区に向かう。
一度は見てみたいと思っていた東京スカイツリーを見に行くことにした。スカイツリーを見た後は、東京ソラマチでの散策だ。
「本音はさ、東京タワーも見たい」
「分かる…大体私たち、東京来るのは初めてだからね!」
「ねー、色んなところを見たいのに時間が足りない…」
「…あ。真帆! 卒業旅行とかでさ、また東京来ようよ! 絶対楽しいと思わない!?」
「それ良い! そうしよう!!」
まだ観光施設を1つも見ていないのに、次の旅行の話をする私たち。
あまりにも気が早すぎて我ながら面白い。
私たちはスマホのマップだけを頼りに歩き続ける。
スカイツリーが少しずつ近くに見えてきた。
「大きいね、真帆」
「本当。近くで見るとこんなにも大きいんだ」
地元では感じることのできない都会の空気に心拍数が上がる。
立ち並ぶ高層ビルやマンションも圧巻だ。
歩いている道沿いにも沢山のお洒落なお店があり、何も考えず歩いているだけでも楽しい。
「真帆、見えたよ」
有紗が指さした先に、スカイツリーの入り口が見えた。
パッと見た感じ、私たちと同じ制服を着た人も結構いるようだ。
「自由とは言え、やっぱりみんな似たようなところに集まってくるよね」
「まぁ、田舎者の私たちには有名な場所しか分からないし」
「それよね」
同じ制服を着た人たちの中に、同じクラスの子を見つけた。
近付くと向こうも私たちに気付き、声を上げた。
「あ、有紗ちゃんと真帆ちゃん」
「やっほー! 今からスカイツリー登るの?」
「そうそう! なんかね、凄く長いエレベーターで上に行くんだって。約50秒とか!! そんな経験、出来ないと思わない!?」
「………エレベーター…50秒?」
クラスの子のその言葉に、有紗が怪訝そうな顔をした。
「有紗?」
「……真帆、ごめん」
「え?」
「エレベーター50秒は、酔う自信しかない!!!!!!」
「え!?」
私もクラスの子もみんなが驚いた顔をした。
いや、有紗…何言っているの!?
「エレベーター…酔うのかな?」
「私、3階建てのショッピングモールのエレベーターも結構ギリギリ」
「えぇー…そんなに乗り物酔い酷かったっけ?」
「年をかさねるごとに悪化しているの。ごめん。ここは、無理だ!!!」
ここまで来て無理なの!!??
しかも年って、まだ高校2年生17歳でしょうが!!!!
…なんてツッコミは心の中で留めて…。
「分かった。じゃあ、ソラマチ行こうよ」
渋々、諦めた。
「本当にごめんね、真帆~!!!!」
半泣きの有紗はその場で土下座をした。
恥ずかしいから速攻立たせ、クラスの子に写真を撮って来てもらうようお願いした。
「全く。有紗…公共の場で土下座なんてしないの!」
「でも、そうしないと心苦しくて…」
「もういいよ。酔われて後々大変なことになっても困るし。自己管理は大切なことだよ」
「真帆〜………!!! 好き、大好き!!! 愛してる!!!!!」
「やめて~~~」
私に抱きついて、全力でギューッとしてくる有紗。
2人くっついたまま、私たちはソラマチの方に向かった。