青春は、数学に染まる。 - Second -
2年生最後の学年末テスト。
考査期間も無事に終了し、答案用紙の返却も行われた。
「…………うそ」
数学以外の科目はいつも通り90点以上。
そして、問題の数学は…なんと67点だった。
放課後、有紗のことを放置して数学科準備室に飛んで行った私。
着いて速攻扉を開けて、中に入った。
「ねぇ、早川先生!! 67点!!!!」
興奮気味の私の様子に少し驚きつつ、先生は笑顔で褒めてくれた。
「本当に、良く頑張りました。僕も採点をしながら涙が出てしまいました。これは藤原さんの努力の結晶です。貴女の力ですよ」
「…違います。先生が根気強く教えてくれたからです!! 多分、先生じゃなかったらここまで伸びていませんよ」
「そんなことありません」
先生は私に近付いてきて、抱き締めてくれた。
「このまま行けば、高校を卒業する頃には90点行けるかもしれませんね」
「本当!! 夢じゃないかも! 3年生になってもここで、早川先生に数学を教わるのですから」
「…もしかして藤原さん。あんなに大嫌いだった数学、好きになりましたか?」
「はい。数学、好きになりました!!!」
「ふふふ、それは良かったです。数学教師として、これほどに嬉しいことはありません…」
頭が濡れる感覚がした。
先生の腕をほどいて顔を見ると、先生は涙を流していた。
「え、泣いている!?」
「…すみません。感動しました…」
大嫌いだった数学。
入学した頃は、数学なんて無くなればいいとまで思っていたのに。
数学の点数が伸びて、さらに数学が好きになるなんて…私も思っていなかった。
数学を親身になって教えてくれる人がいて。
その人はとても大切な人で。
私のことで泣いてくれる人。
「先生、引き続き数学の勉強を頑張ります」
「…はい。その意気です。僕はいつでもお教えします。同好会以外でも、いつでもどこでも。貴女の専属ですから」
「ありがとうございます」
先生としても。
彼氏としても。
どちらの裕哉さんも私にとって大切。
どちらも、失いたくない。
だから…
ラスト1年間も。
今までと同じように。
数学補習同好会で。
『早川先生』に。
数学を教えてもらえると、本気で思っていた。