陰陽現代事情
「ふぅ~ん・・・・」
 ステイツ氏は深く考え込んだ後、尋ねた。
「お前たち、さっきから言っていた『陰陽関係』って何のことだ?詳しく教えてくれ」
 ステイツ氏が机から体を乗り出すようにして聞き出すと、津宵はこう説明を始めた。
「『陰陽説』の教えのことですよ。陽と陰は相反する存在だから、相反する態度をとるべし、という。ところが右上位は、国家的野心から、陽と陰を逆にしてしまった。それが侵略戦争を引き起こし、そして破綻を招いた。私たちは、右上位によって歪められた陰陽説を修復し、正しい陰陽説を広めるために、こうやって活動を続けているんです」
「右上位の世界観は、世間もしくは国家が絶対で、自分のことや外国のことは軽視しています。われわれ左上位は、こうした理屈は間違っていると考え、そのような事を言う者に対して、断固闘っていきます。こうした連中の世界観は、全くデタラメで、全く逆なのです!!」
 安倍は、強い調子で宣言した。
 すると突然、蘆屋が口を挟んで騒ぎ立てるようにして言い出した。 
「逆というのはすなわち、こういうことなんです。自分の言う事は絶対正しいことで、他の日本人の言う事は絶対悪いことで、外国人の言う事は絶対正しいこと!! それが民主的な考え方なんだ!!」
 安倍と津宵、そしてステイツ氏は、蘆屋の滑稽な理屈を、微笑ましい様子で聞いていた。
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