陰陽現代事情
「晴明、お前も政治の呪術を学んで、我々と一緒に活動できる日が来るのを心待ちにしてるよ。なんせ我々だけでは、すべての日本人に呪術をかけるだけの力が無い」
 晴明の父親は、晴明が左上位の活動を継ぐのは当然のような口調で言った。
「なあ父さん、日本人に呪術をかけるって、父さんたち、何をしてるんだ?」
 晴明が尋ねた。
「晴明も見たことあるだろう。我々が街頭を歩き回り、叫んでいる姿を。あれはただ単に叫んでいるだけではないのだよ。民衆一人ひとりに呪術をかけて回っているんだ。我々の呪術にかかった人たちは、おのずと民主的市民として振る舞えるようになるんだ」
 父親が答えた。晴明は、この近所でも有名なチンドン屋を思い浮かべていた。街頭を歩き回り、立派そうなことを叫んでいるのは晴明にも分かる。しかし妙ちくりんな格好をしてそのようなことを叫んでいるのは、何か不自然な気がしていた。自分の父親がそのようなことをしているのは正直、恥ずかしかった。
「右上位という奴らがいてな。奴らは呪術を悪用し、ニッポンジンに悪い心を植えつけようとしているんだ。奴らのせいで日本は愚かな戦争へと走ってしまったのだ。我々は右上位のせいで腐りきってしまったニッポンジンの心をきれいにしようと日々、呪術をかけて回っている。我々の呪術でニッポンジンが行動を起こすようになれば、きっと右上位も退散することだろう」
 蘆屋は、打倒右上位という使命を掲げながら、力強く語った。
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