陰陽現代事情
 学年が変わっても、晴明は人気者だった。相変わらず晴明は、学校ではクラスメートたちに、何かすごい事見せてくれとせがまれ、晴明も気前よくご披露していた。そのうちにクラスメートたちの注文は、ますますエスカレートし、いくらなんでもそれはできないだろうというものまで出てきた。
 クラスでもかなりのワルと言われる横木は、こんなことを言うのだった。
「おい晴明、お前の呪文を使って、教頭を殺してくれないか」
 その言葉に、まわりは静まり返った。
「こ・・・・殺すのか?」
 晴明が尋ね返した。
「本気だ。この前も、あの先公に怒鳴られてよ、頭に来てんだ。あいつがいなくなれば、この学校は静かになる。さ、やってくれよ」
 横木が躍起になって晴明を煽る。
 晴明はしばらく黙り込み、そして、こう言った。
「だめだ。僕にはできない」
「なんでだ!」
 横木の目つきが変わった。
「殺すことはできる。しかし僕は、生き返らせる方法を知らないんだ。僕が殺したことになってしまう。殺人犯になってしまう・・・・」
 晴明が頭を抱えていると、横木が脅しをかけてきた。
「できないとでも言うのか!じゃあ、代わりのことをやれ!」
「例えば・・・・?」
 晴明が顔をそらせながら聞いた。
「例えば、だな。・・・・この学校を壊してくれ!学校が壊れたら、毎日遊べるぞ!みんなもそれを願ってるんだ。さあ、早くやれ!」
 横木が代わりの注文をつけた。しかし晴明はまだ顔をそらせていた。晴明の様子を見て、横木は付け加えた。
「できないとは言わせないぞ。お前の父さんも言ってるじゃないか。”学校なんか、なくなっちまえ”って。たまには親孝行したらどうだい。父さん喜ぶぞ。な、晴明くん!」
 横木が妙に優しい口調で晴明に勧めるように言った。
 晴明は、まだ下を向いていた。
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