婚前どころか、フリですが ~年下御曹司?と秘密の溺甘同居~
「夏樹なら、矢野や一色が来る前にここに顔出しに来てたぞ。 荷物引き取って、俺に頭下げてった。一度家に帰ると言っていた」
「部長、ナイスです!」
部長が語って、菫が親指を立てて破顔する。
「小春。勇気出すところだよ」
菫に言われて、私は力強く頷いた。
「すみません、ちょっと行ってきます!」
オフィスを飛び出し背中にはなおも援護射撃が飛び交う。
一度家に帰るなら道はひとつだ。BCストリートを真っ直ぐ、駅を超えて櫻坂のエリアまで一本道。エレベーターを待つのももどかしくて、階段を駆け下りた。低層階とはいえパンプスで2段飛ばしはなかなかにスリリングだったけど、翔くんに会いたい。考えているのはそれだけだ。
こんなに走ったのは学生時代依頼だと思う。ビジネスエリアに向かって通勤する人の並に逆らい、ベリが丘駅を越えた。もう家についてしまっただろうか。櫻坂の桜並木が見えてきた。ふと、見慣れた背中をみつける。高級住宅街に向かう通りだ。閑散としていて、春の風が吹き付ける度に桜が美しく舞っていた。
「翔くん!」
遠ざかりかけた背中を追いかけ、声が届く距離になる。名前を呼べば、彼はすぐに振り返ってくれた。
「小春さん!? え、どうしたんですか、仕事は、いやその前になんでそんなに走って、…」
私の姿に驚き、息絶え絶えの私を気遣うように見つめる。
翔くんは私の息が整うのを待ってくれる。良かった。無視して行っちゃったりしなくて。
「部長、ナイスです!」
部長が語って、菫が親指を立てて破顔する。
「小春。勇気出すところだよ」
菫に言われて、私は力強く頷いた。
「すみません、ちょっと行ってきます!」
オフィスを飛び出し背中にはなおも援護射撃が飛び交う。
一度家に帰るなら道はひとつだ。BCストリートを真っ直ぐ、駅を超えて櫻坂のエリアまで一本道。エレベーターを待つのももどかしくて、階段を駆け下りた。低層階とはいえパンプスで2段飛ばしはなかなかにスリリングだったけど、翔くんに会いたい。考えているのはそれだけだ。
こんなに走ったのは学生時代依頼だと思う。ビジネスエリアに向かって通勤する人の並に逆らい、ベリが丘駅を越えた。もう家についてしまっただろうか。櫻坂の桜並木が見えてきた。ふと、見慣れた背中をみつける。高級住宅街に向かう通りだ。閑散としていて、春の風が吹き付ける度に桜が美しく舞っていた。
「翔くん!」
遠ざかりかけた背中を追いかけ、声が届く距離になる。名前を呼べば、彼はすぐに振り返ってくれた。
「小春さん!? え、どうしたんですか、仕事は、いやその前になんでそんなに走って、…」
私の姿に驚き、息絶え絶えの私を気遣うように見つめる。
翔くんは私の息が整うのを待ってくれる。良かった。無視して行っちゃったりしなくて。