婚前どころか、フリですが ~年下御曹司?と秘密の溺甘同居~


5月に入り、暑いと感じる日が増えた頃。私、一色小春は重大な局面に立たされていた。
向かい合うは、私の両親、そして遥太だ。
『いつかは紹介しなさい』と言われていたことと、どうしても翔くんが会わせてほしいというのでセッティングしたこの日。翔くんと連れ立って実家に訪れていた。
緊張どころか堂々と私の家族と向き合う翔くんに、こっちがそわそわしてしまう。母は翔くんを見るなり目を輝かせていたからたぶん顔が気に入ったんだと思う。ほんと失礼なんだから。遥太はやっぱり仏頂面で、『姉ちゃんを泣かせたら許さない』とか言ってたくせに和やかに行く気はないらしい。父は意外にもいつも通りに見える。

「北条と言えば、ツインタワーの社長がそうだったよな……」

自己紹介を終えて父の第一声がこれだ。やっぱり驚くよね。娘の彼氏が大企業のご子息だったら。

「はい。いずれは会社を継ぐことになります」

翔くんは依然としてナチュラルだ。そんなさらっとすごいこと言うもんじゃないよ。

「若いのに優秀なんだな。 大変だろう。小春が君みたいに立派な人についていけるか心配だ」

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