婚前どころか、フリですが ~年下御曹司?と秘密の溺甘同居~
菫がいうのは、翔くんが発案したある企業とのプロジェクトのことだ。それが軌道に乗り、社長や役員からも評価されて、彼の後継者としての面目が一気に立ったことになる。
この一年間の彼の努力を見てきた身としては大変喜ばしい。
「これでますます忙しくなるかもね。 社長も素質のある彼を放ってはおかないだろうし」
「えー、まずは小春と結婚でしょ? 落ち着いたらって前から言ってて、もう後継者としての手腕は十分知らしめたじゃない」
「そうなんだけどね…」
すぐに結婚、は難しいと思うのだ。翔くんの優秀さが顕著になって、彼に求められるものはさらに大きく重くなった。翔くんの疲れた心を癒しそばにいられたらそれでいいと思っている私としては、結婚を急ぐつもりはない。翔くんに余計な負担をかけたくないしね。もっとも、社長のご意向としては結婚も大事なプランだとは思うけれど。
「うかうかしてると、かっさらわれちゃうんじゃない? その辺不安はないわけ?」
まぁ、ないとは言いきれないよね。なんせ彼はモテる。それに上層部で活躍するようになってから拍車がかかった。もともとは遠目から眺めるファンがほとんどだったのが、見た目より柔らかい雰囲気の彼の人となりを知る人が増え、お近付きになりたい女子に囲まれることもあるとか…。実は私も、1度その現場を目撃したことがある。ボブが可愛らしい感じの女の子だった。翔くんは爽やかな笑顔を振りまきつつも十分な距離感は保っているようだったし、何より会社だし気にしない素振りで通り過ぎた。未だに私の顔を見る度に嬉しそうに顔を綻ばせ、抱きしめてキスをしては『充電』なんてホッとしているような人だ。翔くんに限って気を許して誰かとどうにかなる…なんてことはないと分かっている。毎日色んな女の子が近くにいるんだなぁと嫌な感情が湧かないとは言えないけれど、そんな負の感情、身重の菫に聞かせたくない。第一、そこまで気になることでもないのだから。
この一年間の彼の努力を見てきた身としては大変喜ばしい。
「これでますます忙しくなるかもね。 社長も素質のある彼を放ってはおかないだろうし」
「えー、まずは小春と結婚でしょ? 落ち着いたらって前から言ってて、もう後継者としての手腕は十分知らしめたじゃない」
「そうなんだけどね…」
すぐに結婚、は難しいと思うのだ。翔くんの優秀さが顕著になって、彼に求められるものはさらに大きく重くなった。翔くんの疲れた心を癒しそばにいられたらそれでいいと思っている私としては、結婚を急ぐつもりはない。翔くんに余計な負担をかけたくないしね。もっとも、社長のご意向としては結婚も大事なプランだとは思うけれど。
「うかうかしてると、かっさらわれちゃうんじゃない? その辺不安はないわけ?」
まぁ、ないとは言いきれないよね。なんせ彼はモテる。それに上層部で活躍するようになってから拍車がかかった。もともとは遠目から眺めるファンがほとんどだったのが、見た目より柔らかい雰囲気の彼の人となりを知る人が増え、お近付きになりたい女子に囲まれることもあるとか…。実は私も、1度その現場を目撃したことがある。ボブが可愛らしい感じの女の子だった。翔くんは爽やかな笑顔を振りまきつつも十分な距離感は保っているようだったし、何より会社だし気にしない素振りで通り過ぎた。未だに私の顔を見る度に嬉しそうに顔を綻ばせ、抱きしめてキスをしては『充電』なんてホッとしているような人だ。翔くんに限って気を許して誰かとどうにかなる…なんてことはないと分かっている。毎日色んな女の子が近くにいるんだなぁと嫌な感情が湧かないとは言えないけれど、そんな負の感情、身重の菫に聞かせたくない。第一、そこまで気になることでもないのだから。