婚前どころか、フリですが ~年下御曹司?と秘密の溺甘同居~
3、好きにはなれない
お日様もすっかり昇った頃、翔くんと家を出発する。まずは私のマンションに向かって、生活しているうちに気づいたちょっとした忘れ物の回収と、軽く掃除もする予定だ。
彼の運転の助手席に座るのは2回目だけど、相変わらず滑らかで静かなドライブだ。マンション近くのちょっと狭い有料駐車場にパーキングするのも、難なくクリアしていた。
マンションまでをふたりで歩いていて、ふと前と違うことに気がつく。
「そういえば、この辺街頭が増えたみたい。 1週間前は無かったのに、空き巣があったからかなぁ」
防犯対策の早いこと。さすがはべりヶ丘タウンの開拓地ってところか。
「コンビニも立つみたいですね。 ほら、あそこ」
彼の視線の先には、絶賛工事中と思われる建物。看板を見る限りコンビニエンスストアらしい。
「わ、ほんとだ。 明かりが増えると夜も安心だね」
「小春さんは俺のそばにいるのでもっと安全です」
「今は、でしょう? 翔くんの結婚問題が無事解決した頃には空き巣も捕まってるといいな」
「…小春さん、俺は――」
「あ! 着いた。 さっと済ませちゃうね」
あからさますぎたのは自覚あり。だけど、彼が何を言おうとしたかなんてだいたい想像がつく。翔くんにいちいち惑わされるのは極力回避したい。