婚前どころか、フリですが ~年下御曹司?と秘密の溺甘同居~

サウスエリアのショッピングモールまではほど近い。車で数分移動したところだ。
休日なので家族連れやカップルで賑わっていた。
冗談抜きで、気を抜いたら翔くんを見失いそう。彼は背が高いから見つけやすいけど、その前に人に埋もれてしまったらおしまいだ。

「小春さん」

不意に呼ばれて顔を上げると、背をかがめた彼の顔が至近距離にあって驚く。

「手、繋ぎたいです」
「なんで!?」

素っ頓狂な声を上げる私に、彼は真面目な顔で答える。

「これじゃあ、小春さんが見たいものも見れないでしょう? 気になるのがあったら手を引いてくれれば、俺も気づけるから」

あくまで効率重視ってことでOK?翔くんに着いていくので精一杯にならないで私も買い物を楽しめるよう気遣ってくれているわけだ。彼なりの優しさなのは分かる。でも…
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