婚前どころか、フリですが ~年下御曹司?と秘密の溺甘同居~
父さん!? 思わぬ人物の登場に一気に心臓が早鐘を打つ。翔くんはご両親に、好きな人がいてその人と一緒に住んでいると話している。そしてその相手は私なのだけど、今ここで私が口を挟むべきか図り兼ねる。いやたぶん、黙っている方がいいだろう。二人を纏う空気が信じられないほど重たい。
「明日のパーティーに出席するようだな」
「ええ」
「くれぐれも、粗相のないようにしなさい」
「分かっています」
冷えきった、というのが相応しいとしか言えない。義務的で冷淡な会話だ。親子の交わすものとはお世辞にも思えない。翔くんはずっと緊張しているようだった。お父様の背が見えなくなると、ようやく肩の力が抜けた。
「父親です。 普通のおじさんだったでしょう?」
予想外の言葉に私はぽかんとする。それから、彼の意図を理解してふっと吹き出す。
「うん。 とってもダンディだった」
彼がどこかの御曹司なのではないかと、私が何度も気にする素振りを見せていたからだろう。さっきまであんなに気を張っていたのに、もういつも通りみたい。たしかに、髭のせいでちょっと雰囲気のあるおじさん、って感じだった。ただならぬ雰囲気がひしひしと伝わってくる感じは拭えない。だけどここは、翔くんの話に乗ることにした。彼のお父様が何者だろうと、翔くんが話さないなら聞かない。今は、まだ。
「じゃあ、小春さん、また」
「ん。 お疲れさま〜」
今度こそ、どこにでもある、先輩と後輩の会話をして別れた。
「明日のパーティーに出席するようだな」
「ええ」
「くれぐれも、粗相のないようにしなさい」
「分かっています」
冷えきった、というのが相応しいとしか言えない。義務的で冷淡な会話だ。親子の交わすものとはお世辞にも思えない。翔くんはずっと緊張しているようだった。お父様の背が見えなくなると、ようやく肩の力が抜けた。
「父親です。 普通のおじさんだったでしょう?」
予想外の言葉に私はぽかんとする。それから、彼の意図を理解してふっと吹き出す。
「うん。 とってもダンディだった」
彼がどこかの御曹司なのではないかと、私が何度も気にする素振りを見せていたからだろう。さっきまであんなに気を張っていたのに、もういつも通りみたい。たしかに、髭のせいでちょっと雰囲気のあるおじさん、って感じだった。ただならぬ雰囲気がひしひしと伝わってくる感じは拭えない。だけどここは、翔くんの話に乗ることにした。彼のお父様が何者だろうと、翔くんが話さないなら聞かない。今は、まだ。
「じゃあ、小春さん、また」
「ん。 お疲れさま〜」
今度こそ、どこにでもある、先輩と後輩の会話をして別れた。