婚前どころか、フリですが ~年下御曹司?と秘密の溺甘同居~
「やることは全てやったし、すでに達成感すら――」
「夏樹くん?」
不自然に話すのをやめた彼を見やる。翔くんの目線の先には、2階の出入口。
「あそこ、警備の穴ですね。 開場前とはいえ等級3が一人で持つには守備範囲が広すぎる」
等級…たしか警備課の職員は能力や勤続年数に応じてランク分けされていて、より精度の高い警備体制を整えていると聞く。その人がどのランクかは警備課の関係者だけが判断基準を知ることを許されていて、私たちでは見分けはつかない。広報部に来る前は営業部と警備課の経験がある翔くんだから分かったことだ。それにしても、あんなところにまで目を配らせて気がつくなんて、警備課でも相当なエリートぶりだったのが窺える。
「俺ちょっと確認してきます。小春さんは先に戻っててください。コーヒー、ご馳走様です」
「分かった。 先行ってるね」
ぺこりと頭を下げ、翔くんは2階へ向かった。私はホールへ戻る。
「夏樹くん?」
不自然に話すのをやめた彼を見やる。翔くんの目線の先には、2階の出入口。
「あそこ、警備の穴ですね。 開場前とはいえ等級3が一人で持つには守備範囲が広すぎる」
等級…たしか警備課の職員は能力や勤続年数に応じてランク分けされていて、より精度の高い警備体制を整えていると聞く。その人がどのランクかは警備課の関係者だけが判断基準を知ることを許されていて、私たちでは見分けはつかない。広報部に来る前は営業部と警備課の経験がある翔くんだから分かったことだ。それにしても、あんなところにまで目を配らせて気がつくなんて、警備課でも相当なエリートぶりだったのが窺える。
「俺ちょっと確認してきます。小春さんは先に戻っててください。コーヒー、ご馳走様です」
「分かった。 先行ってるね」
ぺこりと頭を下げ、翔くんは2階へ向かった。私はホールへ戻る。