婚前どころか、フリですが ~年下御曹司?と秘密の溺甘同居~
「あれ、一色、夏樹と一緒じゃなかったのか?」

会場の入口付近で部長に声をかけられた。

「夏樹くんなら警備のことで席を外してます。すぐに戻ってくると思いますよ。 何かありましたか?」
「いや、社長が夏樹のこと呼んでてさ。 あいつ、なんかやらかしたかー?」
「社長が…夏樹くんのことだから、悪いことではないと思いますけど…」
「だよなー。 まあいいや、夏樹戻ってきたら伝えといて」

そう言って部長は気だるげに会場の奥へと戻っていった。
ツインタワーオフィスの社長…北条氏から直々に呼ばれるなんて。彼の日頃の仕事ぶりからしても不思議ではない。広報部以外でも活躍していたみたいだし、いつかは広報部も去っていくのかな。それはちょっと寂しいのは否定しない。
間もなく翔くんが会場にやってくる。

「大丈夫だった?」
「はい。 少しトラブルがあって人手が足りてなかったみたいで。でももう対応できてます」

翔くんの報告にほっと息を吐き出す。

< 68 / 130 >

この作品をシェア

pagetop