婚前どころか、フリですが ~年下御曹司?と秘密の溺甘同居~
「大丈夫ですか? 避難経路はこちらですよ」
エレベーター付近の老夫婦に駆け寄る。
「あぁ! 良かった、気がついたら周りに誰もいなくてどうしようかと…」
男性の方がほっと表情を弛め、ご婦人の手を引く。ゆっくりな足取りの女性を気遣うように歩いているので、逃げ遅れたのだろう。
先ほどの階段までくると、女性は手すりと男性の手を借りて一段ずつ降り始める。上層階から降りてきた人たちはもうラウンジに着いたのだろうか。私たち3人の足音だけがカーペットに吸収されていく。付き添うようにして、ようやく踊り場まで降りた時だった。
コツコツと、もうひとつ足音が響いている。見回りのスタッフや、警備課長の人かもしれない。だけど、万が一を考えると不安だった。
「急ぎましょう」
とはいえ焦って階段から落ちるなんてことはあってはいけない。なるべく落ち着いて、かつ迅速に避難を続けた。もうひとつの足音はまだ聞こえる。
ふと、婦人の足が止まった。
「大丈夫かい? 足が痛むのか」
「えぇ、ごめんなさいね、言うことの聞かない体で…」
エレベーター付近の老夫婦に駆け寄る。
「あぁ! 良かった、気がついたら周りに誰もいなくてどうしようかと…」
男性の方がほっと表情を弛め、ご婦人の手を引く。ゆっくりな足取りの女性を気遣うように歩いているので、逃げ遅れたのだろう。
先ほどの階段までくると、女性は手すりと男性の手を借りて一段ずつ降り始める。上層階から降りてきた人たちはもうラウンジに着いたのだろうか。私たち3人の足音だけがカーペットに吸収されていく。付き添うようにして、ようやく踊り場まで降りた時だった。
コツコツと、もうひとつ足音が響いている。見回りのスタッフや、警備課長の人かもしれない。だけど、万が一を考えると不安だった。
「急ぎましょう」
とはいえ焦って階段から落ちるなんてことはあってはいけない。なるべく落ち着いて、かつ迅速に避難を続けた。もうひとつの足音はまだ聞こえる。
ふと、婦人の足が止まった。
「大丈夫かい? 足が痛むのか」
「えぇ、ごめんなさいね、言うことの聞かない体で…」