婚前どころか、フリですが ~年下御曹司?と秘密の溺甘同居~
翔くんはここのところ珍しく疲れた顔をしている。刺身を酢飯の上に並べて、お吸い物を温めたところで翔くんがぼそりと呟く。
「何も、聞かないんですね」
その声は覇気がなくて、いつもの翔くんからは想像がつかないくらい。
私はあっけらかんとして答える。
「家族会議でしょ? 人の家庭のことに首は突っ込まないよ。翔くんが話聞いてほしいならいくらでも聞くけどね」
「…小春さん」
翔くんが言い淀む。お椀にお吸い物を注いで、丼と一緒にテーブルに運ぶ。
「どうしたら好きになってくれますか?」
今度は私が黙り込む番だ。翔くんが私を見上げる。背の高い彼は座っていても私と目線が近い。翔くんの瞳が一瞬揺れてから、強く意志のあるものになる。
「あなたを手離したくない。 でも、小春さんの気持ちが一番大事です」
「…どうしたの? 珍しく弱気じゃない?」
茶化すように言っても翔くんの表情は変わらない。真剣で、どこか思い詰めたようにも見える。1年前、慣れない職場とプレッシャーに疲弊していた時みたいだった。
「何も、聞かないんですね」
その声は覇気がなくて、いつもの翔くんからは想像がつかないくらい。
私はあっけらかんとして答える。
「家族会議でしょ? 人の家庭のことに首は突っ込まないよ。翔くんが話聞いてほしいならいくらでも聞くけどね」
「…小春さん」
翔くんが言い淀む。お椀にお吸い物を注いで、丼と一緒にテーブルに運ぶ。
「どうしたら好きになってくれますか?」
今度は私が黙り込む番だ。翔くんが私を見上げる。背の高い彼は座っていても私と目線が近い。翔くんの瞳が一瞬揺れてから、強く意志のあるものになる。
「あなたを手離したくない。 でも、小春さんの気持ちが一番大事です」
「…どうしたの? 珍しく弱気じゃない?」
茶化すように言っても翔くんの表情は変わらない。真剣で、どこか思い詰めたようにも見える。1年前、慣れない職場とプレッシャーに疲弊していた時みたいだった。