婚前どころか、フリですが ~年下御曹司?と秘密の溺甘同居~
「弱気じゃないです。 好きです、小春さんのことが、どうしようもなく」
そう言っておきながら、切なげに目を伏せるから私は内心慌てていた。何が彼を悩ませているのか、私が今翔くんに好きだと伝えたらどんな反応をするのか、なんでそんなに悲しそうなのか。考えても、何も悟らせてくれない翔くんを分かるのは簡単ではない。
…栞さんとの結婚をやめる話が上手くいっていないのだろうか。聞いたら彼は答えてくれる? ああでも、私はまだ知るのが怖いと思っている。
終わりが近い。もやもやざわざわしたものが胸に広がって、苦しかった。
私のマンションの近くであった空き巣の犯人が捕まったというニュースが飛び込んできたのは、その数日後のことだった。翔くんと同居を続ける理由が、これでひとつ無くなったことになる。あとは翔くんの結婚の話なんだけど…私は栞さんを誘って駅前の居酒屋さんに来ていた。栞さんなら何か知っているかもしれないと思ったのだ。そもそも彼女も当事者なんだしね。
「栞さん! ごめんね、ここまで遠かったでしょう?」
「いえ、小春さんからのお誘いが嬉しくて全く気になりませんでした。それにこういうお店にはあまり来たことがないので楽しみにしていたんです!」
初めて会った時、栞さんのそばについていたガタイの良い男性はボディーガードの方だったそうで、つまり彼女はSPがつくほどの重要人物ということ。居酒屋を利用したことがないのも無理はない。私とでは確実に生活水準に違いがあるだろうから。今日会う場所を決めるのに悩んだけれど、栞さんが質素な空間に憧れていると分かってすぐに決まった。
この間のアフタヌーンティーとの差が激しくもあるが、これはこれでアリだろう。
翔くんとよく来るお店とは違うところを選んだ。なんとなく、あそこは特別なものに思えたから。最近はあまり行けてないなと少しだけしんみりしてしまう。
座敷テーブルで向かい合って、栞さんはビールのジョッキを両手で持ってそっと置く。動作が丁寧で慣れていない感じが可愛い。
そう言っておきながら、切なげに目を伏せるから私は内心慌てていた。何が彼を悩ませているのか、私が今翔くんに好きだと伝えたらどんな反応をするのか、なんでそんなに悲しそうなのか。考えても、何も悟らせてくれない翔くんを分かるのは簡単ではない。
…栞さんとの結婚をやめる話が上手くいっていないのだろうか。聞いたら彼は答えてくれる? ああでも、私はまだ知るのが怖いと思っている。
終わりが近い。もやもやざわざわしたものが胸に広がって、苦しかった。
私のマンションの近くであった空き巣の犯人が捕まったというニュースが飛び込んできたのは、その数日後のことだった。翔くんと同居を続ける理由が、これでひとつ無くなったことになる。あとは翔くんの結婚の話なんだけど…私は栞さんを誘って駅前の居酒屋さんに来ていた。栞さんなら何か知っているかもしれないと思ったのだ。そもそも彼女も当事者なんだしね。
「栞さん! ごめんね、ここまで遠かったでしょう?」
「いえ、小春さんからのお誘いが嬉しくて全く気になりませんでした。それにこういうお店にはあまり来たことがないので楽しみにしていたんです!」
初めて会った時、栞さんのそばについていたガタイの良い男性はボディーガードの方だったそうで、つまり彼女はSPがつくほどの重要人物ということ。居酒屋を利用したことがないのも無理はない。私とでは確実に生活水準に違いがあるだろうから。今日会う場所を決めるのに悩んだけれど、栞さんが質素な空間に憧れていると分かってすぐに決まった。
この間のアフタヌーンティーとの差が激しくもあるが、これはこれでアリだろう。
翔くんとよく来るお店とは違うところを選んだ。なんとなく、あそこは特別なものに思えたから。最近はあまり行けてないなと少しだけしんみりしてしまう。
座敷テーブルで向かい合って、栞さんはビールのジョッキを両手で持ってそっと置く。動作が丁寧で慣れていない感じが可愛い。