婚前どころか、フリですが ~年下御曹司?と秘密の溺甘同居~
「小春さんが聞きたい話って、翔のこと、ですよね」
「…うん。 翔くん、最近帰りが遅くてね。家族会議?をしてるって言うんだけど、ほぼ毎日二十二時過ぎに疲れた様子で帰ってくるからさすがに心配で…栞さんなら、何か知ってるかなと思って。やっぱり結婚のことなのかな?」
栞さんは神妙な面持ちで口を開く。
「翔、3ヶ月前に私と結婚しないってお父さんに言ったらすごく怒られたみたいです。それくらいでめげる男ではないのは小春さんも知っていると思いますが、お父さんの猛反対を無視して…って感じで小春さんと同居を始めて。今まではお父さんの方も諦め半分で放置していたけど、新年度が始まる前に今後のことについて話し合いをしてる…というのは、父から聞きました」
3ヶ月前って、時期的に翔くんに同居と恋人のフリをしてほしいと言われた頃だ。知らなかった。翔くんは最初、栞さんの新たな結婚相手さえ見つければ大丈夫…みたいなことを言っていたから。父親との間に確執を生じてまで結婚を回避するために行動していたなんて。それに、私を好きだからって理由もあるのだ。人生の一大イベントさえも自分の意思を貫くことが難しい環境の中、彼はそれをものともせずに私にアプローチし続けてきたのだ。
「仕事のことも、どうなるか分からないと思います。もしかしたら広報部にはいられなくなるかもしれない。 翔は小春さんのことが好きだけど、大切にしたいと思っているからこそ自分から離れる選択をしてもおかしくありません。自分の家族のいざこざに、大事な人を巻き込みたくはないだろうから」
「栞さんも、もしかして辛い思いをしたの?」
自分のことみたいに話す彼女を見かねて思わず口を挟む。栞さんが、ハッとして弱々しく笑みを浮かべる。
「前に、好きな人がいるって言いましたよね」
私は頷く。同じ会社の人だと言っていた。
「父に、その人と私が仲が良いことを知られてしまって。目の前で彼に怒鳴ったんです。『お前は娘に相応しくない!』って。もう私びっくりして、我が親ながら最低だなと私も怒鳴り返しまして…今喧嘩中です」
「そんなことが…相手の方は?」
「彼は、もう一度ちゃんと父に会って話したいって言ってくれてます。私はその気持ちだけで嬉しいんですけどね。正直父の反対なんてどうでもいいとすら思ってしまいます」
栞さんは彼を思い出しているのか、目を細めて微笑む。愛おしそうな表情に、二人の仲が壊れたりしなくて良かったと思う。
「…うん。 翔くん、最近帰りが遅くてね。家族会議?をしてるって言うんだけど、ほぼ毎日二十二時過ぎに疲れた様子で帰ってくるからさすがに心配で…栞さんなら、何か知ってるかなと思って。やっぱり結婚のことなのかな?」
栞さんは神妙な面持ちで口を開く。
「翔、3ヶ月前に私と結婚しないってお父さんに言ったらすごく怒られたみたいです。それくらいでめげる男ではないのは小春さんも知っていると思いますが、お父さんの猛反対を無視して…って感じで小春さんと同居を始めて。今まではお父さんの方も諦め半分で放置していたけど、新年度が始まる前に今後のことについて話し合いをしてる…というのは、父から聞きました」
3ヶ月前って、時期的に翔くんに同居と恋人のフリをしてほしいと言われた頃だ。知らなかった。翔くんは最初、栞さんの新たな結婚相手さえ見つければ大丈夫…みたいなことを言っていたから。父親との間に確執を生じてまで結婚を回避するために行動していたなんて。それに、私を好きだからって理由もあるのだ。人生の一大イベントさえも自分の意思を貫くことが難しい環境の中、彼はそれをものともせずに私にアプローチし続けてきたのだ。
「仕事のことも、どうなるか分からないと思います。もしかしたら広報部にはいられなくなるかもしれない。 翔は小春さんのことが好きだけど、大切にしたいと思っているからこそ自分から離れる選択をしてもおかしくありません。自分の家族のいざこざに、大事な人を巻き込みたくはないだろうから」
「栞さんも、もしかして辛い思いをしたの?」
自分のことみたいに話す彼女を見かねて思わず口を挟む。栞さんが、ハッとして弱々しく笑みを浮かべる。
「前に、好きな人がいるって言いましたよね」
私は頷く。同じ会社の人だと言っていた。
「父に、その人と私が仲が良いことを知られてしまって。目の前で彼に怒鳴ったんです。『お前は娘に相応しくない!』って。もう私びっくりして、我が親ながら最低だなと私も怒鳴り返しまして…今喧嘩中です」
「そんなことが…相手の方は?」
「彼は、もう一度ちゃんと父に会って話したいって言ってくれてます。私はその気持ちだけで嬉しいんですけどね。正直父の反対なんてどうでもいいとすら思ってしまいます」
栞さんは彼を思い出しているのか、目を細めて微笑む。愛おしそうな表情に、二人の仲が壊れたりしなくて良かったと思う。