美しき造船王は愛の海に彼女を誘う

「だから、最初の移転にかかる費用はうちが持つよ」

「移転費用はうちの預金をはたいて何とかします。最初商品をそろえるのに本社のお金を使うことになります。でも店の色を出すには自前である程度揃えないと無理なんです。その余裕が私にはない。それを実は神崎さんにお願いするつもりでした」

「じゃあ、いいだろ?」

「売れなかったら?家賃払えませんよ」

「名取が払うよ」

「会社の支店継続は、毎月の売り上げ基準が決まっています。地代の高いベリが丘でどれだけ名取さんが考えているのかまだ聞いてません。もっと話し合ってからきめないと……」

「君は……文句しかないのか?」

 怒ってる。でも、言わないとオーナー気分の彼には伝わらない。名取さんも絶対頭にくるはずだ。
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