美しき造船王は愛の海に彼女を誘う

 彼女を責める資格は僕にはない。彼女とはこれまでかもしれないと不安がよぎった。

 不安を忘れるには仕事をするのが一番だ。僕は机から頭を上げて懸案事項を椎名に聞いた。

「鈴木造船の社長はベリが丘総合病院で手術したんだよな?いつだったっけ?」

「二週間前です。お見舞いに行ったほうがいいと思いますが、あちらの秘書室に行ってもいい状態なのか聞いてみましょう」

 椎名が確認したところ、大丈夫だというので早速午後面会時間に手土産をもって病院へ向かった。

 すると、病室へ向かうエレベーターに乗ろうとしたら、聞きなれた声がする。

 見ると彼女だ。清水さくら。あの日以来だった。
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