美しき造船王は愛の海に彼女を誘う

 開いたドアの前に息を切らして立っている彼女がいた。驚いたんだろう、真っ赤になっているのが可愛い。

 いつもと違うからか、そんな風に思ってしまった。

「……あ、神崎さん……」

「なんだ?この間の物件なら、名取に一週間考えるよう伝えてある」

「ご、ごめんなさい。本当に、先日は失礼なことを言いました。私のために色々考えて動いてくださったのに、お礼も言わず、あんなこと……」

 真っ赤になったまま僕の顔を見てもごもごと言う。

 手元は指がもぞもぞ動いている。緊張しているんだろう。僕の前に来る女性がよくこうなるのでわかる。
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