美しき造船王は愛の海に彼女を誘う

 倒れそうになったが、踏ん張った。

 声の主はあの人。隣には前の店に定期的に注文に来てくれていた執事の椎名さんもいる。

「ひどい……もう少し、言い方ないですか?」

 上目遣いに神崎さんを見た。

 玲瓏皇子と呼ばれていると伯父が言っていたが、今の彼はその言葉の通りだ。本当に冷たい。

 今日は春らしい暖かい日だが、私にはブリザードのような仕打ちだった。

「蓮様。開店のお祝いに今までうかがえず、やっと来たのに何ですかその言い方は……清水様、大変申し訳ございません、この度は開店おめでとうございます。とても明るい店先ですね。店の中もよく見えますね」
< 119 / 403 >

この作品をシェア

pagetop