美しき造船王は愛の海に彼女を誘う

 張り付けたような微笑み。状態をわかっていながらお世辞を並べる。

 ええ、お客様がいないからよく店内も見えるでしょうね。ふたりとも、結構な人だ。

 あああ、本当に……この人たちはどうあしらえばいいのだろう。

「椎名。これは思ったよりも早くだめになりそうだな」

「蓮様。思ってもはっきりとは口に出さず、アイデアを出すのが出資した人間のすべきことですよ。最初は花屋をやるんだとウキウキ話しておられましたのに……」

「神崎副社長……せっかくの出資金が回収できそうになくて誠に申し訳ありません。来週に向けて作戦を練り直しますので今しばらくお待ちください」
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