美しき造船王は愛の海に彼女を誘う

 私は頭を下げた。

「馬鹿だな。僕にそんなとってつけたようなセリフ言う必要あるのか?ここに出資した段階で僕らは同じ船に乗ってるんだぞ、転覆するときは一緒に海へ投げ出される。ちなみに僕は泳げるが、そんな事態はまっぴらごめんだね」

 そっぽを向いて言う。何なのよ!

「ちょ、ちょっと……蓮様……清水さん、すみません。蓮様は口がお悪いのです」

「はあ、そのようですね。どうせ私は馬鹿ですよ。すみませんね」

 私も自虐的になった。最早、客相手の言葉遣いではなくなった。椎名さんは私たちをかわるがわる見て、困ったようにため息をついている。
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