美しき造船王は愛の海に彼女を誘う

 客がいないのをいいことに、8セットも調子に乗って作ってみた。三人で話し合いながら、そのほとんどを神崎造船のオフィスに運んでもらった。

 すると、どういうことだろう。

 数日後、SNSを見たと言うビジネスマンやOLさんが店に大勢現れた。

 これと同じものが欲しいとか、少しこれより小さめの、とか、色をこうしてなど細かい注文が入りだした。

 その画像を見せてもらうと、この間私が作った神崎造船用のアレンジメントや花瓶に生けたドライフラワー、グリーンの観葉植物だった。神崎造船のインスタにあげられているのだ。うちの店名をタグ付けしてくれている。

 全て、神崎造船本社の受付や、重役室の窓際に置かれている写真だ。とても美しく撮られている。

 こういうことだったのかと初めて気づいた。彼の注文はうちの宣伝のためだった。
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