美しき造船王は愛の海に彼女を誘う

 あの人は本当にすごい人なのね。経営ってそういうことなんだと初めてわかった。

「すごいですね。さすがです……私、一体何をしていたんでしょう」

 彼がすごいのはわかった。店長は私なのに……私は一体何をしていたの?ただ、求められるものを売っていただけ。今日も追いまくられて、希望されたものを作るだけだった。しかも同じようなものばかり。

「……清水さん?」

「あ、いいえ。本当にありがとうございました。再入荷はいつ入ります?」

「早ければ今日の夜にも入ります。昨日のうちに注文済みですので、夜の便で船が来ますよ。今日中にトラック回しますか?」

「はい。お願いします。今日はここに泊まりますので……」
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