美しき造船王は愛の海に彼女を誘う

 そうだった、私たちは仕事の下見に来たのだった。

 すっかり勘違いしそうになってしまった。私はそれに誘われただけだ。

「君は少しお酒飲める?」

 彼が首をかしげて聞いた。

「え、はい。でも船だからあまり飲むと酔うかも」

「大丈夫だ。さっきみたいに飛ばしたりはしないよ。帰りは真っ暗だし、スピードは抑えるから……」

「でも、神崎さんは飲まないでしょ?」

「そうだな。運転するしね」
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