美しき造船王は愛の海に彼女を誘う

「……」

 母は僕にお茶を入れてくれた。少し話そうと目の前の椅子に座った。

 僕の家は、ここノースエリア内の高級住宅街のなかでも奥まったところにあり、ひときわ目を引く洋館だ。

 大理石が敷き詰められた玄関ポーチ。建物も西洋風の石造りだ。

 色も白が主体で白亜の豪邸という人もいる。豪邸は言いすぎだが、部屋の中は驚くほど西洋の家具や調度品がおかれている。

 僕の小さい頃遊びに来た友人が、神崎君のおうちは絵本のお城なんだねとよく言っていた。

 自分でもどうしてこういう家なんだろうと他の人の家と比べて不思議に思ったのを覚えている。
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